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東京地方裁判所 昭和44年(秩ろ)86号 決定 1969年10月02日

被制裁者 弁護士 山根二郎

決  定

(住居・氏名略)

右の者に対する法廷等の秩序維持に関する法律による制裁事件について、次のとおり決定する。

主文

本人を監置五日に処する。

理由

(事実の要旨)

本人は、昭和四四年一〇月二日午前一〇時一〇分過頃、東京地方裁判所刑事第七〇一号法廷において、秋月昭磨ほか一五名に対する兇器準備集合、建造物侵入、公務執行妨害被告事件審理の際同法廷に出頭したが、入廷した裁判長が着席直前傍聴人のうち起立しなかつた者に対して、法廷においては訴訟関係人のみならず傍聴人も亦裁判官の入退廷においては起立し送迎するのが慣行であるとして起立を促し、右傍聴人を一旦起立させた後、裁判官外各関係人らは着席したが、当日出頭した被告人若井英樹、同藤川豊、同四戸純一及び同金子敏幸らが法廷内被告人席前方に佇立したままでいるので、右の者らに審理をはじめるから被告人席へ着席するよう再三にわたつて促したが、依然佇立したままであつたため、法廷内で裁判長の指示に従わないと退廷させる旨を告げたにもかかわらず、その命令に従わないので退廷を命じたところ、水上弁護人が、「東大事件ではいずれの法廷においても被告人は被告人席に着席していない」、「着席しないと云う理由だけで被告人らに退廷を命ずるのは被告人の権利をじゆうりんするものである」など再三繰り返して述べ裁判長が、慣行に従つて各関係人らの起立や着席を命ずることは各関係人に単に一挙手一投足の労をわずらわすに過ぎず、これによつて何ら各関係人の権利を害するものではないばかりか、この指示命令に何らの理由もなく反抗するのは法廷内の秩序を乱すものであるから許されない旨縷々述べたところ、本人は、「裁判長は傍聴人や被告人の一挙手一投足さえも強制するもので不当である」旨などを大声で言いつのり、裁判長の制止にかかわらず「裁判長の只今の措置は何らの法的根拠にもとづかないものである」旨繰り返して述べ、さらに裁判長が一つの問題について裁判所と訴訟関係人との見解とが相違する場合は、当該の法廷においては裁判所の見解と措置に従うべきである旨述べると、さらに「裁判長の訴訟指揮はあらゆる法律や憲法に優先すると云うのですか」などと裁判長の制止にかかわらず繰り返して述べ立て、さらに裁判長に「答えなさい」などと云つて居丈高に詰め寄るなどけん騒に及び、もつて裁判所の職務の執行を妨害し、かつ裁判の威信を著しく害したものである。

(適用法条)

法廷等の秩序維持に関する法律第二条第一項

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